ラオスモエギハコガメ

数年前の話になりますが、一度だけラオスモエギハコガメを迎えたことがありました。

お店に入荷してから一度も食べないままに5ヶ月が経過し、スカスカの状態でバックヤードにキープされている個体でした。
正規な販売が出来ずに持て余していたのを安価で譲って頂いたのです。

すぐに病院へ連れて行ったのですが、あんまりな状態だったので先生的にも厳しそうな感触。
とりあえず駆虫薬と栄養剤を注射して下さり、「食べてくれるといいですね」とのことでした。

もう本当に猶予のない状態だったので、心配で堪らなかった私は翌日に別の病院へと駆け込みました。
今度は積極的な攻めの治療が魅力の先生でして、一晩預けて迎えに行くと、首に開けられた穴から胃へと繋がるチューブが差し込まれ、外れないように縫い付けられていました。
このチューブを使って流動食を胃の中に送り込むことで、個体への負担を掛けることなく給餌できるという仕組みです。

しかし、「これなら回復してくれるかもしれない!」と期待したのも束の間、そのラオスは一週間足らずで死んでしまいました。

今までに多くの失敗をしておりますが、あのラオスを立ち上げられなかったことは非常に印象深く、考えさせられた出来事の一つです。
私は大いに落ち込みましたが、その一件が今のモエギ飼育へと繋がったのは間違いありません。
もう一度挑戦したいとの思いから、ぶーこさんに「カメを買うのはこれで最後にするから!」と大嘘をついて頼んだのを覚えています(苦笑)

 

 
それから年月が過ぎ、、、
つい先日、とある業者様よりラオスモエギハコガメを頂きました。
20160327

いや、別にプレゼントされたとかではなく、問題のある個体を引き取ったという表現が正しいです。

・問題①:右手がありません。
イベントなどに行くと、何らかの事情により手足の一部を欠損した亀が値引き販売されていることがありますが、多くの場合は “その状態” になって久しく、生命としては安定している個体だと思います。
しかし、今回のラオスは右手を失ってから日が浅いようで、まだ傷口が完治しておりません。
確証はありませんが、輸送中などに起きた人為的な事故が原因のような気もします。

・問題②:立ち上がっていません。
国内に入ったばかりで、まだ立ち上がっておりません。
もともと餌付けが厄介な種ではありますが、腕の大怪我が心身のダメージを増幅させているのでしょう。
食事どころか顔を出すことにも呆れるほど慎重で、お約束の軽さです。

要するに、
「売り物には出来ないので、立ち上げにトライする気があるのなら差し上げます」
という境遇の個体だったのです。

未熟なカメ飼いでありながら厄介な個体に手を出すのは私の良くない習性です。
ただ、著しい価格高騰により飼(買)うことを諦めていた種を迎えられたのは何かの縁だと思っています。
なんというか、私のような貧乏サラリーマンに与えられたチャンスとでも言いましょうか・・・
どうにか立ち上げて、飼育を楽しめるラオスモエギになって欲しいところです。

とはいったものの、早くもいくつかの壁に阻まれておりまして、まず大きいのは怪我の治療です。

本来であれば、頻繁に傷口の消毒と薬の塗布を行うべきなのですが、手に持つと完全なハコ状態になってしまうのでそれが出来ません。
水中に入れて顔を出すのを待つという手法もありますが、毎日のようにやっていたら萎縮するばかりで食べずに死んでしまうのではないかと心配です。
無難なのは薬浴でしょうが、これも過度に行うのはストレスとなってしまうので悩みどころです。

また、怪我の様子から定期的な抗生物質の投与も必要だと思われますが、食べない以上は注射を用いるしかなく、更に心を閉ざしてしまう一因となるでしょう。

そして、飼育環境における壁は脱水の予防です。
食べない上に体力のないサイズですから、脱水にならぬよう水飼いを軸に考えたいのですが、傷口が塞がっていない個体を恒常的に水に浸すのは衛生面にも問題がありそうです。
水場と陸場を自力で移動してくれれば助かるのですが、動く気配が全くありません。

つまり、“怪我の治療”と“立ち上げ”が急務な状況であるにもかかわらず、どちらかを優先するともう一方に悪影響が出るという、追い詰められたような事態でして、当初予想していたよりも深刻な個体であることに苦しんでおります。
まあ、タダで譲って下さるくらいですから当然なわけですが・・・

自分なりに色々と考えた結果、いくら薬を用いても栄養を摂取しなければ回復は難しいと思われますので、まずは食べることを最優先に進める作戦でいこうと決めました。
せめて排泄物が確認できれば話は変わりますが、現状では内臓の状態もわからないので強制給餌は行わず、個体がリラックス出来る環境作りに最善を尽くしたいと思います。

結果が出る前に長々と書き連ねましたが、備忘録も兼ねつつ、ここ数日で頭の中を駆け巡ったことを文字として残しました。

 


6 thoughts on “ラオスモエギハコガメ

  1. ワキンナマスター

    こんにちは♪

    更新お待ちしておりました
    先日はお目にかかれず残念でしたが、また宜しくお願いします

    ラオスモエギの負傷個体…さぞかし悩ましいことと思います
    しかし救う気持ちで譲り受けられたと思いますのでなんとか回復の兆しを見せてくれるのを祈っております
    暗所でしばらく様子見て、せめて顔だしてくれれば表情で次にどの手を打つか考えることもできるので、落ち着いた環境作りという選択はよくわかります

    これといった妙案を提案できず心苦しいですが、今は心の窓を開いてくれるをの待つようですね
    ミツオ地方向けて元気玉を送りますね!

    返信
    1. ミツオ 投稿作成者

      >ワキンナマスターさん

      こちらこそ、先日はお顔を拝見できず残念です。
      お忙しいことと存じますが、またイベントに行かれる際にはお声掛け願います。

      ラオスは五里霧中といった状態です。。。
      救うなんておこがましいですが、今まで失敗してきた経験を活かし、出来る限りのことはしようと思っています。

      とはいえ、立ち上げ前のモエギは本当に癖がありますので、結果を焦らずに個体のペースを見極めつつ管理を行うことくらいしかできませんが・・・(苦笑)

      元気玉、ありがとうございます!(笑)

      返信
  2. かもめパン

    まさに、アジア的な要素を集約した感じですね…。
    体力が落ちてるときのケガは怖いですよね。ヨーロッパヌマガメが入荷時の指の欠損が原因と思われる感染症になったのを思い出します。ただ、その時は体力も食欲もあったので、抗生剤を餌に塗して予後も問題なく回復しましたが…。
    今回の個体は同優先順位をつけて対処するかが難しそうですね。
    なんとか立ち直ってくれればいいですね。

    返信
    1. ミツオ 投稿作成者

      >かもめパンさん

      ただでさえ輸入直後のモエギは神経を使いますが、今回は怪我を抱えているのがネックです。
      衰弱した個体を何度も立ち上げているかもめパンさんならどうするのか非常に興味がありますが、実物を見ないと何とも言えませんよね(苦笑)

      おっしゃる通り、やることの優先順位が鍵だと思いますが、正直言って今回に関してはどちらにしても微妙だと感じております。。。

      焦る気持ちを抑え、個体のペースを第一に行動したいと思います。

      返信
  3. BONZO

    ボクなんかモエギというだけで裸足で逃げ出したくなるのに、あえてこんな難物件に挑まれるミツオさんの心意気、敬服いたします。
    簡単にはいかないのはわかりきったことですが、上手くいくといいですね~。
    陰ながら応援しております。

    返信
    1. ミツオ 投稿作成者

      >BONZOさん

      いえいえ、心意気なんてカッコイイものではなく、単におバカなだけです。。。
      ただ、業者さんから今回の話を伺った時、個体の末路を考えると放っておけなくなりまして・・・
      私ごときで救えるものではないのかもしれませんが、モエギの飼育は色々と学んだつもりなので出来ることは全てやろうと思っています。

      私も、生かせそうにない個体を迎えるのは嫌ですよ。。。(苦笑)

      返信

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